ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ことばのあとにダンスで、 ダンスのあとにことばで、 踊りながらことばを交わして、 てのひらを指でなぞると、くすぐったいでしょ? 集まった落ち葉を踏んづけて歩く。 風が墓石とわたしときみにくるくる巻きつく。 ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ダンスのあとにことばで、 ことばのあとにダンスで、 踊りながら歌がきこえる。 おしえて、その歌をもっと聴かせて。 無理な願いなら、それに近いことをしようよ。 おしえて、きみのことぼくはなにもわからないから。 ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ことばのあとにダンスで、 ことばのまえにダンスで 踊りながら歌がきこえる。 おしえて、その歌をもっと聴かせて。
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怖くない話を怖がるわたしの無茶なリクエストをきいて、タバスコの話をしてくれたひとの優しさがわすれられない。 いつもよりずっと早口で、いままでにないくらい慌てた様子で聴こえてきたタバスコの話は、だけどきちんと形になっていた。わたしの怖い気持ちを受け止めて、やわらげる責任なんてこのひとには無いはずなのに。怖がるわたしがおかしいはずなのに。おどろいて、おかしくて、わかるようでわからなくて、笑った。わたしの笑いはしばらく止まらなくて、そのあいだも、友だちはタバスコの話を続けた。 どうしてあんなに優しいのかな。知ってることを、与えてくれる。優しくないときもあるのかな。反射運動だったのかな。 考えるふりをして、もらった炎に何度も手をあてにいく。柔らかな赤い熱が、暗い部屋のなかで揺れる。
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うれしい。 はじめて手作りしたバナナケーキとクリームを、セピア色のランプのしたで、母と父と次兄といっしょに食べた。 次兄が「すばらしい」と褒めてくれた。母も父も、おいしいって、言ってくれた。 テーブルのまんなかには、空色斑点の貘、ステンドグラスのツリー、頭のうえで炎をゆらめかせながら「You melt me...」のパネルをもつ雪だるまの姿をしたキャンドル風ライト、おかあさんの大事なファンタジアのミッキー、ガラス窓にオレンジ色の灯りが透けているえんとつ屋根のお家が、おかあさんの手で丁寧に並べられていた。 川のように流れていくクリスマスソング。柑子色に輝くリース。舌のうえにのびるクリームのやわらかい冷たさ。固いケーキを噛んでひろがるバナナの香り。 掬う網はちがっても、あのときあったものは、わたしと母と父と次兄でそんなにちがってないはず。それでもやっぱり、同じではないとわかってるけど、それはただ、わたしの手があなたの手じゃないという、それだけのことだ。 わあ、「それだけのこと」だって! 夕方の空は鼠色も白色も桃色も青色も光って、たまに降る雨とあられが眼鏡レンズを濡らした。友だちに送るための色と形を探して、切り取る。 飛行機は桃色に輝いて飛んでいた。月は白色を超えて濃くまろやかに光る。こちらからは、そうみえていたよ。