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 ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ことばのあとにダンスで、 ダンスのあとにことばで、 踊りながらことばを交わして、 てのひらを指でなぞると、くすぐったいでしょ? 集まった落ち葉を踏んづけて歩く。 風が墓石とわたしときみにくるくる巻きつく。 ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ダンスのあとにことばで、 ことばのあとにダンスで、 踊りながら歌がきこえる。 おしえて、その歌をもっと聴かせて。 無理な願いなら、それに近いことをしようよ。 おしえて、きみのことぼくはなにもわからないから。 ハイになれるものはこの世にたくさんあるね。 ことばのあとにダンスで、 ことばのまえにダンスで 踊りながら歌がきこえる。 おしえて、その歌をもっと聴かせて。
怖くない話を怖がるわたしの無茶なリクエストをきいて、タバスコの話をしてくれたひとの優しさがわすれられない。 いつもよりずっと早口で、いままでにないくらい慌てた様子で聴こえてきたタバスコの話は、だけどきちんと形になっていた。わたしの怖い気持ちを受け止めて、やわらげる責任なんてこのひとには無いはずなのに。怖がるわたしがおかしいはずなのに。おどろいて、おかしくて、わかるようでわからなくて、笑った。わたしの笑いはしばらく止まらなくて、そのあいだも、友だちはタバスコの話を続けた。 どうしてあんなに優しいのかな。知ってることを、与えてくれる。優しくないときもあるのかな。反射運動だったのかな。 考えるふりをして、もらった炎に何度も手をあてにいく。柔らかな赤い熱が、暗い部屋のなかで揺れる。
しとしと雨をまってる。怖くてたまらない身体に重なる葉っぱをまってる。冷たくて重たい安らぎを求めてる。放り出せないから毛玉だらけの赤い靴下を履いて眠る。 紫色の空がそこにもあったこと。目と血の巡り。歌になってわたしの耳に飛び込む。さよなら。さよなら。別々だから出会えたね。
後ろに回って、ぼくがどれだけ嘘をついたか、みてごらんよ。それとも、わたしとおんなじで、そんなこと必要ないかな。 『スピッツ コンサート 2020 “猫ちぐらの夕べ”』をオンライン上映で視聴した。 このまま通り過ぎて、はだしのままじゃれあうことが、できないのだとしても構わないよ。スコップで掘り当てるつもりもない。きみのことがすきだよ。 風はまあるく吹く。
うれしい。 はじめて手作りしたバナナケーキとクリームを、セピア色のランプのしたで、母と父と次兄といっしょに食べた。 次兄が「すばらしい」と褒めてくれた。母も父も、おいしいって、言ってくれた。 テーブルのまんなかには、空色斑点の貘、ステンドグラスのツリー、頭のうえで炎をゆらめかせながら「You melt me...」のパネルをもつ雪だるまの姿をしたキャンドル風ライト、おかあさんの大事なファンタジアのミッキー、ガラス窓にオレンジ色の灯りが透けているえんとつ屋根のお家が、おかあさんの手で丁寧に並べられていた。 川のように流れていくクリスマスソング。柑子色に輝くリース。舌のうえにのびるクリームのやわらかい冷たさ。固いケーキを噛んでひろがるバナナの香り。 掬う網はちがっても、あのときあったものは、わたしと母と父と次兄でそんなにちがってないはず。それでもやっぱり、同じではないとわかってるけど、それはただ、わたしの手があなたの手じゃないという、それだけのことだ。 わあ、「それだけのこと」だって! 夕方の空は鼠色も白色も桃色も青色も光って、たまに降る雨とあられが眼鏡レンズを濡らした。友だちに送るための色と形を探して、切り取る。 飛行機は桃色に輝いて飛んでいた。月は白色を超えて濃くまろやかに光る。こちらからは、そうみえていたよ。
  光る青色をみた。みたよね。信じてあげたいな。何回もみあげて、ことばを探したよね。内側と外側が引っ付くような。 明るい灰色の雲が水色に混じり合って空になってた。わたしはこれになりたいって言ってた。そういうことにしたよ。 ちくちく。 積もらない雪とニュースでながれてきた消えない雪がぐちゃぐちゃになって身体の内からは音も聞こえないのに声が出る。 あいさつ。癒せるように繋げている足跡。
 大きくてすばしっこい風が、白色のままの雲を分厚く遠くまで拡げて、全然無くならない雨を降らした。 どんどん冷たく霞んでいく空気に雨がひっきりなしに落ちてくる。ひたひたになった竹林が揺れることを諦めたみたいに、もったり揺れているのをみた。 それもこれも雪の前触れ。 おやすみなさい。もうすっかり眠たいから。