怖くない話を怖がるわたしの無茶なリクエストをきいて、タバスコの話をしてくれたひとの優しさがわすれられない。
いつもよりずっと早口で、いままでにないくらい慌てた様子で聴こえてきたタバスコの話は、だけどきちんと形になっていた。わたしの怖い気持ちを受け止めて、やわらげる責任なんてこのひとには無いはずなのに。怖がるわたしがおかしいはずなのに。おどろいて、おかしくて、わかるようでわからなくて、笑った。わたしの笑いはしばらく止まらなくて、そのあいだも、友だちはタバスコの話を続けた。
どうしてあんなに優しいのかな。知ってることを、与えてくれる。優しくないときもあるのかな。反射運動だったのかな。
考えるふりをして、もらった炎に何度も手をあてにいく。柔らかな赤い熱が、暗い部屋のなかで揺れる。