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 誰かの歌声に隠れながら書き始める。音楽を聴くと感情が簡単に揺れる。だから、そのときの気持ちだけがまるで真実みたいに感じたり、普段が嘘のように、何かを忘れたまま生きていたように思えたりする。だけど、音楽を聴いていないときも、あなたの歌を聴いていないときもわたしは存在している。音楽は行動や気持ちを簡単に作るからこそ、それに流されたくないときがあるよ。音楽はすきだよ。踊るのもすきだよ。自分でやめられるあいだはすきだ。
涼しい風が日陰をさっさと冷やして真夏のピークが過ぎた。このあいだまで素足じゃ火傷しそうに熱かったコンクリートの道で、風光が鼻を持ち上げたまま立ち止まった。 軽自動車がうるさく行き交っていたはずなのに、その音を覚えていない。覚えているのは、熱さと緊張で少し平ために開いた風光の口元と細めた目。涼しい風を感じる毛だらけの体。