うれしい。
はじめて手作りしたバナナケーキとクリームを、セピア色のランプのしたで、母と父と次兄といっしょに食べた。
次兄が「すばらしい」と褒めてくれた。母も父も、おいしいって、言ってくれた。
テーブルのまんなかには、空色斑点の貘、ステンドグラスのツリー、頭のうえで炎をゆらめかせながら「You melt me...」のパネルをもつ雪だるまの姿をしたキャンドル風ライト、おかあさんの大事なファンタジアのミッキー、ガラス窓にオレンジ色の灯りが透けているえんとつ屋根のお家が、おかあさんの手で丁寧に並べられていた。
川のように流れていくクリスマスソング。柑子色に輝くリース。舌のうえにのびるクリームのやわらかい冷たさ。固いケーキを噛んでひろがるバナナの香り。
掬う網はちがっても、あのときあったものは、わたしと母と父と次兄でそんなにちがってないはず。それでもやっぱり、同じではないとわかってるけど、それはただ、わたしの手があなたの手じゃないという、それだけのことだ。
わあ、「それだけのこと」だって!
夕方の空は鼠色も白色も桃色も青色も光って、たまに降る雨とあられが眼鏡レンズを濡らした。友だちに送るための色と形を探して、切り取る。
飛行機は桃色に輝いて飛んでいた。月は白色を超えて濃くまろやかに光る。こちらからは、そうみえていたよ。