居候25日目。朝の散歩で風光と雨に降られる。
夕飯のサンマを庭で焼いた。西の方にまだ青さが残るくらいの夜の時間、名前も姿もしらない虫たちのたてる音をきく。ぼくは自分のしたいことだけをできるように自分を動かすのが得意なのかもしれない。部屋で夕飯の支度をするより、外でソーダを飲みながら魚を焼くほうがいいに決まってる。庭に面したリビングの窓越しに風光の黒い目をみる。ぼくは自分の声が住宅街に響いてることも忘れて、住人を庭へと誘う。もう死んでしまった犬の骨を埋めたあたりに、ハブランサスが4本(うち3本はまだつぼみ)も生えていたのだ。住人が花をみて「ももに会いにきたんだよ」と言う。爽楽は住人のことがすきだったから、そんなわけないと思ったけど、そう言ってくれたことが意外だけどそことなくうれしくて、「そうかあ」と言ってみる。明日、あの花を一輪挿しに挿して家の中に入れる。