居候24日目。二日間日記を飛ばしてやった。22日目の夜は過食してしまって抑うつ状態だった。23日は居候先の住人と、焼却予熱を利用した温水プールと同じ施設の中にあるお風呂に浸かりにいった。温水プールには「流れるプール」があって、ぼくと住人は、温かいお水に流されて、ついたり離れたりしていた。浮いてるだけでするする前に進む感覚は、夢のなかで空を飛んでるときと体感がよく似てる。両腕で大きく水をかくと、さらにぐんと進む。ぼくと住人以外にプールには3、4人ぐらいしかいなかった。それでもぼくは人がいる、と思って少し緊張したけど、住人にとってはそれぐらいの人数がちょうどいいみたい。不思議だけど、ぼくも誰もない博物館の展示室を怖いと感じるから、それと似たような感覚なのかな。他者の感覚を「理解」しようとする自分にひやっとするけど、もう自分を罵るのはやめた。いや、やめられてはないけど、できるだけしたくない。
今朝、風光と6時半ごろ散歩に出ると、涼しくておどろく。小学生の夏休みを思い出した。「朝の涼しい時間に勉強しましょう」と書かれた紙の通りにしてみようと机に宿題を広げてみるけど、汗ばんだ右腕に紙がひっつく。扇風機の風にはためくページがバタバタして気が散る。つまらないから鉛筆の先に力を込めて、ワークの余白に濃い線を、引く。鉛筆の芯はやがてページの段を滑り落ちて勉強机を走る。角度の浅くなった鉛筆は手から滑って、床に転がる。ぼくはそれを拾って、またワークの余白に太い線を刻む。今度は机まではみ出ても滑らないよう、前より垂直に力を込める。