居候27日目。頭が痛い。風光の足の裏はあたたかい。昼寝のまえ、住人の名前を呼んでからふざけて「どこにいるの?」と叫んだら、真剣でやさしい「ここだよ」がかえってきた。今度はぼくの名前が呼ばれて、ぼくは住人にかけよる。机の上に座った住人がぼくを抱きとめて、「だいすきだよ」という。ぼくは、住人の名前を呼ぶ。涙はでない。十年前、おでこを畳にこすりつけてひとりで泣いていた、あの部屋で。もう泣かなくても、抱きしめてもらえるようになった。