衝動で、あるいは流れにまかせて、自分を置いてきてしまった。あの人の何にもならないかなしみや息のできない苦しみを置いてきてしまった。連れてこられたらよかった? でも、あれを背負って走るなんて無理だった。歩くなんてもっと無理だ。細い一本道は駆け抜けないと落っこちる。
だから窓から見える景色が突然引っかかりなく流れ出したときは何も言わずただ唾を飲んだ。