リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ 夕陽で黄色くなった壁におかあさんとぼくの影がうつっていた。砂と水で作ってもできそうな影だった。おかあさんが勢いよく吸って空にしたジュースの紙パックも、玄関にかけられた帽子も。壁には触れられなかった。いつか触れられなくなるのだとわかった。いま触れられるのかさえわからなくなった。それでも、波に浮かぶオレンジの光を、桃色から紫色に変わっていく空を、階段の踊り場でゆらゆら歌うわたしを、みていたのはおかあさんだ。テープの戻る音がして、自転車の車輪がカラカラ回る。 リンクを取得 Facebook × Pinterest メール 他のアプリ