宵闇でいっぱいになった部屋には酸素が足りていないせいなのか、昼寝から目を覚ますと体が暑かった。
ところがベッド横の窓をほんの少し開けても変わらない。それじゃあ気にするのをやめてみようと右向きにまあるくなっていると、やっぱり熱いし苦しいし、重い。被っている布団の数を減らせばいいんだろうけど、厚いタオル生地を頬や手から取り上げたら気持ちよくなれない。眠たいのだから、ほんとうはもう一度眠りたい。ただ、体の火照りだけが余計なのだ。
いまは右に倒した両膝の間にすべての布団を挟んで、右の肩と腿以外の体を天井にみせている。

頭のなかのおしゃべりが早く止まればいいのにとおもう。そのためには、こうして書いたり描いたりするのがいい。散歩はおしゃべりをさらに盛り上げる。

あのときみた雲をきのう、わたしは体に纏った。
iPodの白色の照明の前を通り過ぎてゆく小さな愛おしい粒、それは雲じゃないけど、光は月ではないけど、わたしはうれしかった。うれしくなるほかなかった。
わたしは宇宙のコピーを見出したいわけでも、低濃度の理想をみたいわけでも無い。この位置に拡がって過ぎてゆく水の粒に、わたしは触れていた。
あのひとのすきそうな、淡白な味の焼き菓子みたいな葉が、公園のアスファルトに、濡れるとてらてらと光るこの岡の土にひっついていた。
風のみえない夜に粒々が行き交う。
わたしのための世界だった。誰かのためと勝手に決めつけるくらいなら、そういってしまったほうがいい。