壮平のDVDをみた。
「グロリアス軽トラック」を聴いて、畳のうえでぐるぐる踊りながら回った。おかあさんが笑った。
「Sunrise & Sunset」を聴いて、底に沈みながら、立ち昇る銀色の泡ぶくを泣きそうになりながら見上げた。
壮平の歌は壮平の歌だ。そのなかにはわたしの歌になった歌もある。壮平の歌がすきだ。わたしの歌にならない歌を画面から目を逸らさずに、聴いた。
跳び上がり、そろそろとつま先を下ろす。飛べないはずなのに、もう少しで飛べそうになる。地面から離れていきそうになる。あちこちに生る果物に手が届かなくなる。手を繋ごうとしても、そのころにはもうどこにあの子や君がいるのかわからない。屋根と盛り上がった緑と窪んだ影が寄り集まって、わたしを弾く。どこにも触れられない。背中から、何もないところへとどんどん引っ張られていく。空間。寂しさと、諦めと、たくさんの嘘。終わらない。色と温度が次第にわからなくなる。わたしのものだけがなくなっていく。
6月8日の月曜日、ばかな事故に見せかけて死のうとしたけど、失敗した。そのときに使いきるはずだった道具がまだ部屋にきちんと並んでいる。
わたしの生まれた年は梅雨が明けなかったらしい。おかあさんからきいたから、ほんとうかどうかはわからない。でも、ちょうどいいとおもった。
いない、ことを認めた。
もうあの子はいない。
同じ会話を繰り返すこともない。
どこにもいない。
大きな大きなスイカをみた。
はっきりとした緑と、窪んだ影の縞模様。