ラスベガスで、銃の乱射事件が、あったらしい。いよいよ、さっきまでよんでいた本が、とてつもなく、遠いところにいってしまった。ざっきーさんに電話をして、わけのわからないまま、話した。無能感は、なにを話してもついてくるけど、時間がたつにつれて、声ははっきりした。
電話を切ってから、わたしは、ひとりに耐えきれなかったんだと、気づいた。だれかとわたしだと、現実は遠のく。ひとりと現実は、あまりに直結だ。わたしが、人間分子の文字をなぞっているあいだ、数えられない(知りえない)ひとがいた。
だけど! そうだ、おかあさん、わたしがおかあさんを知ることは、おかあさんを守っていることにちがいないんだ! それに、だれかは、だれかを守っていた。わたしは、彼女や彼を守ることができなくても、風子を守ることはできるんだ、そして、それは、だれかである。そう、わたしはだれかで、だれかを守ることができるんだ!
わたしは、そこにいないぶん、ここにいた。だれかを知らないぶん、おかあさんを知っていた、風子を知っていた、さやちゃんやまるを知っていた!
まちがいない。ひとりは、世界に直結だ。
まちがいない。ひとりは、世界に直結だ。