25日の夜、まりなさんは桃をもってやってきた。わたしたちは、くわくわとはしゃいで、するする皮をむいて、へんてこに削って、出窓にならんでから、桃を食べた。
まりなさんの提案は、いつも、唐突で突飛で、だけど的を得てる。そういえば確かに、わたしはこれがしたかったって、おもわせる。相対性理論を演奏したかったし、あのときガストに行きたかったし、わたしは桃を食べたかった。

けらけらと食べおえて、フジファブリックをきく。26日になると、まりなさんが「Birthdayを聞こう」と言った。いつもどおり音楽にまみれ、3時に眠った。

まりなさんのラインのミュージックは、志村の誕生日と同じように、「Birthday」になった。


朝、教室にはいると、たくさんの人が、いっぺんにお祝いしてくれた。そっぽを向く人もいた。わたしは自分が、約4ヶ月間、誠実であったことをみとめた。


たやちゃん。


ソラニンを読んだ。フジファブリックをおもった。アジカンをおもった。たまらず走った。フジファブリックをおもった。ギターをおもった。志村をおもった。わたしをおもった。階段を駆けあがった。


たやちゃんが!


わたしが死んだら!
世界にひとつ、穴ができるのだ。骨を埋めても満たされない穴だ。死ななきゃできない穴だ。
わたしが死んだら!
だれかの世界は、穴を抱え、動いていく!


19歳である。


10日が志村の誕生日であったように、26日はわたしの誕生日だった。