花びらにさわるのがすき。おちた椿は、おや指とひとさし指でつまむようにして、なでる。とじているチューリップは、おや指以外の指さきで、したから、やさしくふれる。
昼、同じ学科の女の子と、桜と椿の花びらにふれた。「指さきがおいしい」といったら、「おいしいね」とうなずいてくれた。ほっとした、
なまぬるい午後。商店街を歩いていたら、橙のリードをひきずり、赤いランドセルをかついで歩く、白い小型犬をみつけた。黒い服を着た、たばこを吸っている男のひとがその近くにいた。飼い主らしい。
わたしは、なんにも考えちゃいなかった。
とつぜん、いぬが走った。男のひとが、いぬの名前を呼ぶ。
わたしは、犬を追った。なかなか追いつかない。1メートル前、犬のランドセルには、セーラームーンのシールが貼ってあった。いぬが振り返り、目があった。おかしい。
追いはじめてから10秒後に、リードをつかんだ。男のひとは、「ありがとう」と言って、わたしからリードを受けとり、走っていた方角をみて動かなかった白いぬは、飼い主がふいた、特殊なくちぶえに反応し、飼い主に、よっていった。
書いてみても、やっぱりへんだ。あのいきものも、あのくちぶえも。いぬのリードをつかんだとき、わたしはきっと、だれかの悪だった。